ビル・工場の電気設備で行う通常の月次点検・年次点検の記録は、自社の保安規程に定めた期間、保存することが基本です。「電気事業法で全国一律に3年」とは判断せず、外部委託している場合は委託契約の保存条項も照合してください。
本記事では、主に高圧受電設備を管理する担当者に向けて、「3年」の根拠、保安規程の確認手順、外部委託・電子保存時の注意点を解説します。使用前自主検査など、別の制度に基づく検査記録との違いも押さえましょう。
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電気事業法における点検記録の保存期間は何年?
通常の月次・年次点検は自社の保安規程を確認する
通常の保安点検の記録について、自社で守るべき年数を確かめる際は、届出済みの保安規程と、その別表・関連細則を確認します。「記録」「記録の保存」「保存年限」などの条項を探し、点検の種類ごとに保存期間が分かれていないかを見てください。
点検記録と、事故記録・主要機器の補修記録・設備図面などでは、必要な保存期間が異なることがあります。点検報告書に「3年」と書かれていても、関連するすべての資料を同時に廃棄してよいとは限りません。保存対象と期間をひも付けて管理しましょう。
例えば、山口県下松市が公開する自家用電気工作物電気保安規程では、点検記録を3年以上、電気事故記録を永年としています。これは同市の規程の例であり、すべての事業場に適用される全国共通の年数ではありません。
「3年間保存」の背景には委託契約の条項もある
「3年」という数字には、電気保安の委託契約上の根拠がある場合もあります。関東東北産業保安監督部が公開する保安管理業務の委託契約書例では、第9条で、報告された業務結果の記録等を設置者・受託者の双方が3年間保存する内容を示しています。
確認するのは、実際に締結した契約と自社の保安規程です。例えば、規程が5年、契約が3年であれば、設置者は契約上の3年だけを理由に自社の記録を廃棄できません。どの記録を、誰が、いつまで保存するかを整理しましょう。
法定の検査記録と通常の点検記録を分ける
この記事で扱う通常の月次・年次点検と、使用前自主検査・溶接自主検査・定期自主検査などの法定の検査は、区別して考えます。後者の対象となる設備や記録は、該当する法令の保存要件を別途確認しなければなりません。
自家用電気工作物の記録だからといって、保存期間をすべて自由に決められるわけではありません。判断に迷う場合は、記録名・対象設備・検査の根拠を整理し、電気主任技術者や所轄の産業保安監督部に確認してください。
点検記録の保存が必要になる法的な仕組み
電気事業法第42条は保安規程の届出と遵守を定める
電気事業法第42条は、対象となる事業用電気工作物について、保安規程を定めて届け出ることや、設置者と従業者がその規程を守ることを定めています。通常の保安規程の手続きは「届出」であり、外部委託承認などの手続きとは区別します。
また、電気事業法施行規則第50条では、保安規程に定める事項が示されています。一般的な自家用電気工作物では、巡視・点検・検査に加え、保安に関する記録や、該当する法定検査等の記録保存も確認対象です。
保安規程は、社内の任意の目安として扱うものではありません。適用される法令と規程に沿って記録を残してください。届出や変更手続きは、中部近畿産業保安監督部「保安規程に関する手続き」で確認できます。
点検周期・報告周期・保存期間を混同しない
「点検する間隔」「行政機関などへ報告する間隔」「記録を残す期間」は別のものです。例えば、消防庁の消防用設備等の点検・報告に関する案内にある1年に1回・3年に1回という報告周期を、電気設備の点検記録の保存年数に当てはめることはできません。設備と記録の区分ごとに、根拠を確認しましょう。
自社の保存期間を確認する4つの手順
1.対象設備と記録の種類を洗い出す
最初に、月次点検報告書、年次点検報告書、測定結果、点検写真、補修記録などを一覧にします。写真や測定結果が別ファイルになっている場合は、どの報告書に対応するのかも記載してください。法定の検査記録が含まれる場合は別の区分を設けます。
2.最新版の保安規程と別表を照合する
手元の保安規程が最新版かを確認し、記録の種類ごとの保存年限と管理担当を読み取ります。本文に「必要な期間」とだけ記載されている場合は、別表や関連細則まで確認しましょう。記載が曖昧なまま、担当者の判断で保存期間を短くすることは避けます。
期間が明確でない場合は、電気主任技術者等と整理し、必要な規程の見直しや届出について確認します。社内のファイル整理ルールだけを変えれば済むとは限りません。
3.委託契約と実際の保管状況を確認する
外部委託している事業場では、契約上の保存期間だけでなく、報告書の受領方法、添付写真の扱い、契約終了時のデータ引き渡しも確認します。委託先のシステムで閲覧できても、解約後に閲覧できなくなる可能性を考慮し、自社が継続して参照できる方法を決めておきましょう。
4.保存期間の数え方と廃棄条件をそろえる
社内の管理表には、記録名、適用する規程・契約の条項、保存期間、起算日、保管先、確認担当を記載します。点検日から数えるのか、年度単位の文書管理とどう整合させるのかも確認が必要です。年度で整理する場合も、必要な保存期間を下回らないようにしてください。
保存期間が満了しても、事故調査中や指摘事項が未対応の記録は、継続して使う可能性があります。廃棄前に確認担当の判断を通す運用にしましょう。これは法定年数の追加ではなく、設備管理上の必要性に応じた運用の提案です。
外部委託していても設置者が記録を確認・保存する
保安管理業務を外部に委託していても、設置者が点検結果を確認し、記録を保存する対応は必要です。関東東北産業保安監督部の立入検査の指摘事例では、設置者が点検結果の一部を確認していない事例を取り上げ、報告を受けた設置者自身による確認・保存を改善例として示しています。
受領担当者は、対象設備、実施日、実施者、測定結果、指摘事項を確認します。不備があれば委託先へ照会し、要改修などの指摘には対応担当と期限を付け、補修完了を確認できる資料と一緒に残しましょう。
委託先変更時には、過去の報告書に加え、未対応の指摘、補修履歴、図面との対応を引き継ぐと、次の担当者が設備の状況を理解しやすくなります。委託する業務と施設側に残る役割の整理は、保安管理の外部委託と報告業務の改善を解説した記事もご参照ください。
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紙・PDFの点検記録を探せる状態で保存する方法
報告書・写真・対応履歴を同じ点検にひも付ける
記録は、保存期間を守るとともに、必要なときに取り出せる状態にします。例えば、次のような管理ルールが考えられます。
- 施設ごとにフォルダを分け、年度・点検種別ごとに報告書を保存する。
- ファイル名を「施設コード_点検日_点検種別_確定版」などに統一する。
- 写真と測定結果には報告書番号や設備番号を付け、対応関係を残す。
- 管理表で保管先・保存期限・対応状況を確認できるようにする。
画像として取り込んだPDFは、本文を文字検索できない場合があります。電子化後もファイル名や管理表で探せるようにし、必要に応じてOCRによる文字認識を検討してください。
電子化後も権限・バックアップ・原本の扱いを決める
紙をPDFにしただけで、原本を廃棄できるとは限りません。適用される保存要件と保安規程・契約を確認し、添付資料まで読めること、必要な期間にわたって取り出せることを確かめて判断します。
保存先では、閲覧・編集権限を分け、上書きや誤削除に備えます。共有ドライブに保存する場合も、削除後に復元できる期間やバックアップ方法を確認してください。個人アカウントだけで管理せず、担当者の交代後も組織で参照できる状態にしましょう。
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作成した報告書を設置者が確認し、定めた保存先に残すところまで、運用をそろえることが大切です。SmaKenの導入だけで保存要件への適合が保証されるわけではないため、保存期間・権限・バックアップは利用する保存先も含めて設計します。電気保安業務全体の改善は、電気保安の業務効率化とスマート保安の記事でも解説しています。
まとめ:まずは保安規程と委託契約の保存条項を確認する
通常の月次・年次点検記録は、保安規程と委託契約で保存期間を確認します。法定の検査記録は別途要件を確認し、書類ごとに保存期間・起算日・保管先・担当を整理してください。
期間を把握したら、実際の報告書に欠落がないか、担当者が替わっても取り出せるかを確認しましょう。保存年数と日々の運用をそろえることが、点検記録を確実に残す第一歩です。
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参考資料
- e-Gov法令検索:電気事業法(第42条)
- e-Gov法令検索:電気事業法施行規則(第50条)
- 中部近畿産業保安監督部:保安規程に関する手続き
- 関東東北産業保安監督部:保安管理業務に関する委託契約書例(第9条)
- 関東東北産業保安監督部:電気保安に関する講習資料(立入検査の指摘事例)
- 山口県下松市:自家用電気工作物電気保安規程(第12条)
- 消防庁:消防用設備等の点検・報告に関する案内
※個別設備への適用や保存方法の判断は、最新の法令・保安規程・契約を確認し、電気主任技術者等と協議してください。